■2017年度のCAD/CAM/CAEシステム市場は前年度比3.5%増の見込
日本国内のCAD/CAM/CAEシステム市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、2016年度は前年度比6.3%増となる3,513億円となった。2016年度は個人消費が伸び、公共投資も拡大したことから、景気は緩やかな回復を続けた。また、補正予算で採択された地域未来投資促進事業(革新的ものづくり・商業・サービス開発支援事業、いわゆる「ものづくり等補助金」)の影響などもあり、中小企業の製造業を中心とした設備投資は回復し、CAD/CAM/CAEシステム市場にも好影響を与えた。
2017年度については、雇用・所得環境が引き続き改善し、経済の好循環が進展するなかで、ひきつづき民需を中心とした景気回復が見込まれる。設備投資についても、生産の増加や企業収益の改善等により、前年度比3~4%程度の増加となると見込まれる。こうしたことを背景に、2017年度のCAD/CAM/CAEシステム市場(同ベース)は、3,637億円(前年度比3.5%増)になると見込む。
【図表:CAD/CAM/CAEシステム市場規模推移】
■時期尚早だったサブスクリプションへの移行
これまでのCAD/CAM/CAEシステムメーカーのビジネスモデルは、その大半がライセンス販売であったが、外資系大手ベンダーがサブスクリプション方式に切り替えつつある。サブスクリプション方式とは、ソフトウェアの利用形態のひとつで、ユーザーはソフトウェアを買い取るのではなく、一定期間のみ借りて、利用した期間に応じて料金を支払う方式である。
しかし、サブスクリプションへの移行は成功しているとはいえず、時期尚早だったと言えそうだ。サブスクリプション方式は、クラウド経由での提供を前提としたものとなるが、製造業を中心とした日本国内のユーザー企業は、エンジニアリング分野においては、まだクラウドを本格利用するに至っていない。同時に、日本国内のCAD/CAM/CAEシステム市場は、巨大な販売パートナーが多く、かつ、その多くが複数のCAD/CAM/CAEシステムメーカーとパートナー契約を結んでいる。サブスクリプション方式は販売パートナーにとってはメリットが乏しく、従来型の提供形態をとる他メーカー製品への移行提案が起こりやすい。
■CAD/CAM/CAEシステムと昨今のデジタル革命の動き
昨今、AIが注目されているが、CAD/CAM/CAEシステム市場においては、まだ大きなインパクトを与えてはいない。しかし、ディープラーニングのようなAIは画像処理と相性が良いことから、いずれ利用が進むと考えられる。利用方法としては、例えば、CAEの解析結果をポスト処理した後の画像に適用することで、簡単な一次スクリーニングを行うなどが考えられる。また、過去の図面データを読み込むことで、新たに設計するに際し、類似データを検索するといったことも可能になってくるだろう。
また、プラットフォーム化の進展も注目される動向であるが、上述したようにユーザー企業がエンジニアリング分野においてはクラウドコンピューティングに対し、まだまだ保守的な姿勢が残っているため、それほど大きなインパクトを与えていない。しかしながら、CAD/CAM/CAEシステムメーカー各社とも製造業向けのプラットフォームサービスを提供開始しており、いずれは移行していくものと考えられる。プラットフォームの成否はCAD/CAM/CAEシステム市場の業界地図を大きく変えうる可能性があることから、今後の動向が注目される。
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調査対象:機械系CAD/CAM/CAEシステムメーカー、EDA(Electronic Design Automation)システムメーカー、土木・建築系CADシステムメーカー
調査期間:2017年6月~11月
調査方法:当社専門研究員による直接面談及び電話・メールによるヒアリング
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