矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2017.11.02

社会インフラIT市場に関する調査を実施(2017年)

スマート化進むも、2016年度の社会インフラIT市場は前年度比3.2%減少と縮小傾向。

社会インフラIT市場の概況と予測

2016年度の国内の社会インフラIT市場規模(インフラ運営事業者の発注金額ベース)は、前年度比3.2%減の5,986億円となった。同年度では、鉄道や空港など大きく伸びた分野があった一方で、道路や防災/警察関連での落ち込みが大きく、全体としてはやや苦戦を強いられた。

【図表:国内の社会インフラIT市場規模推移・予測】

【図表:国内の社会インフラIT市場規模推移・予測】
  • 矢野経済研究所推計
  • 注:インフラ運営事業者の発注金額ベース
  • 注:2017年度以降は予測値
  • 注:市場規模には、ハードウェア、ソフトウェア、工事(電気設備・通信設備)、SI、コンサルティング、回線利用料、サービスサポート、保守メンテナンス、要員派遣などを含む。

■次世代型社会インフラIT導入でIT投資コストは抑制され、2022年度までの社会インフラIT市場は微減基調と予測する
ここ数年、公共事業費は拡大基調にある。特に、防災・減災対策や水関連を中心とした老朽インフラ対策、東京オリンピック・パラリンピック及び訪日外国人客対応も含めた港湾や空港、鉄道、道路などの交通インフラ投資が期待され、中でもリニア新幹線需要のある鉄道分野への期待は大きい。地域的には、首都圏での交通インフラ投資の拡大が見込まれる。これらの点を背景に、東京オリンピック・パラリンピック開催前年の2019年頃まで公共事業費は堅調な推移が見込まれる。しかし2020年以降では、社会保障費の増大や財政再建圧力の高まりなどから、公共事業費は抑制されていくと推察する。
社会インフラITにおいては、IoTやセンサーシステム、クラウド、AIなどを活用した次世代型社会インフラITの研究が進められている。今後の社会インフラIT市場では、次世代型社会インフラITの採用(スマート化)が進むと考える。これらの次世代型社会インフラITは、従来型の社会インフラITを代替する形で普及が進むが、その場合、逆に高い投資効果によりIT投資コストを抑制していくことになると考える。このIT投資コストの抑制効果は、行政サイドやインフラ運営事業者も重視するポイントであり、中・長期的に次世代型社会インフラITの導入が進むと予測する。
以上の点を勘案して、市場は微減基調を見込み、2022年度の国内の社会インフラIT市場規模(インフラ運営事業者の発注金額ベース)は5,720億円になると予測する。

注目すべき動向~保全技術者不足をカバーする次世代型社会インフラIT

国土交通省の社会資本整備審議会道路分科会 第44回基本政策部会資料によると、地方自治体のうち、町の46%、村の70%で橋梁保全業務に携わる技術者が存在しておらず、今後も保全技術者の確保には困難が見込まれる。このような保全技術者不足は、橋梁に限らず、インフラ保全全般での構造的なものであり、これを代替する仕組みとして次世代型社会インフラITが期待されている。IoTやセンサーシステム、クラウド、AIなどを活用した次世代型社会インフラITには、以下のような研究テーマがあり、現状では研究段階や実証段階にある。

  • ITモニタリング(IoTを活用したインフラ設備の常時・遠隔モニタリング)
  • 劣化診断支援(インフラ構造物の劣化状態を把握し、スクリーニング業務を効率化する)
  • 予防保全/故障予知(インフラ設備・機器などが故障する前に修繕するようにアラームを出したり、故障の兆しを早期に発見する。現状では故障予知は難しい)

下表に、特に注目される事例をまとめた。

【図表:次世代型社会インフラITの適用事例】

【図表:次世代型社会インフラITの適用事例】
  • 矢野経済研究所作成

※参考資料:
・故障予知ソリューション動向に関する調査(2017年) 2017年8月30日発表
・国内M2M市場に関する調査(2017年) 2017年4月10日発表
・次世代型モニタリングの可能性調査(2016年) 2016年12月12日発表

関連リンク

■レポートサマリ
社会インフラ向けIT市場に関する調査結果2015
故障予知ソリューション動向に関する調査を実施(2017年)
国内M2M(機器間通信)市場に関する調査を実施(2017年)
次世代型モニタリングの可能性調査を実施(2016年)


調査要綱

調査期間:2017年5月~9月
調査対象:官公庁(国土交通省、経済産業省、総務省等)、地方自治体、公的機関(産業技術総合研究所、土木研究所、国土技術総合研究所、各種業界団体)、IT事業者/SIer(システムインテグレーター)、通信事業者、建設事業者、重電メーカー、建設コンサル業など
調査方法:当社専門研究員による文献検索/文献調査、直接面接調査、電話調査などを併用

※社会インフラIT市場とは:本調査での社会インフラIT市場とは、道路・交通管制、鉄道、港湾、空港などの交通関連インフラ、上下水道/浄水場/排水処理などの水関連インフラ、治水・砂防などの河川/ダム関連インフラ、防災・消防・警察関連インフラ等の社会インフラ全般におけるIT関連事業を対象とした。市場規模には、ハードウェア、ソフトウェア、工事(電気設備・通信設備)、SI、コンサルティング、回線利用料、サービスサポート、保守メンテナンス、要員派遣などを含み、インフラ運営事業者(国や地方自治体、高速道路事業者、鉄道事業者など)の発注金額ベースで算出した。

関連マーケットレポート
早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 上級研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。

東京カスタマーセンター

03-5371-6901
03-5371-6970

大阪カスタマーセンター

06-6266-1382
06-6266-1422