矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2017.02.09

POSターミナル市場に関する調査を実施(2016年)

人材不足で押し寄せるセルフ化、進展するタブレット対応

POSターミナルの市場概要

国内のPOSターミナル市場は、既にシステムリプレースが中心の市場となって久しいが、2015年度には、台数、金額ともに大きく伸長した。2014年度は消費税増税の反動により金額ベースでは大きく落ち込んだが、台数ベースでは前年度比5.1%増となっており、業界では、需要が集中した2000年問題対応時にシステム導入したユーザー企業の2サイクル目のリプレースが、ようやくやってきたという見方がされている。2015年度の国内POSターミナル市場規模(メーカー出荷ベース)は、148,273台(前年度比16.1%増)、497億3,500万円(同24.0%増)となった。
2016年度の同市場規模は、147,160台(前年度比0.8%減)、506億9,900万円(同1.9%増)とほぼ横這いの見込みとなるが、今後控えている各種制度改正に向けてユーザー企業は準備段階にあると思われ、2020年をひとつの目途として、POSシステム関連では水面下での投資計画が進んでいると考える。

【図表:国内POSターミナル市場規模推移と予測】

【図表:国内POSターミナル市場規模推移と予測】
  • 矢野経済研究所推計
  • 注:メーカー出荷(台数、金額)ベース
  • 注:2016年度は見込値、2017年度以降は予測値
  • 注:POSシステムは、サーバやPOSターミナル(端末)、POSソフトウェア、その他周辺機器から構成されるが、本調査ではPOSターミナル(端末)の市場規模を算出した。但し、タブレットPOSは対象としていない。

POSターミナル市場の注目すべき動向

■迫られるセルフ化対応
POS業界におけるセルフ化には、二つの流れが存在している。完全に顧客にチェックアウトを任せてしまう「フルセルフ」と、レジの店員(チェッカー)と顧客がレジ業務を分担する「セミセルフ」の二つである。流通小売業におけるチェッカーの人材難は深刻になっており、特に食品スーパーにおけるセミセルフレジが、急速にその存在感を高めている。セミセルフレジは、商品登録を行う機器と支払いを行う機器が別々に構成され、商品登録は店員が行い、支払いは顧客自らが機器を操作して行うシステムであり、これによりレジの生産性の向上が可能となり、新規の商談では、セミセルフが標準スペックとして、RFP(Request For Proposal:提案依頼書)に盛り込まれるようになっている。現在は食品スーパーにほぼ限定されているセミセルフであるが、今後普及が進めば、他の小売業態にも普及が広がっていくと考える。
また、フルセルフレジについても、ローソンとパナソニックの、業界初となる完全自動セルフレジ機「レジロボ」の実証実験が始まるなど、今後の動きが注目される。

■タブレットへの対応
流通小売業においては、タブレットPOS(サーバ上に保管されたPOSソフトウェアを、タブレットをクライアントとしてSaaS方式で利用するPOSあるいはレジサービス)が勢力を拡大しつつあり、その影響は避けられない段階に来ている。POSターミナルメーカーにおいても、工夫をこらし市場の変化に対応しようと試みがなされている。例えば、業界大手メーカーは、タブレット部分とプリンタ搭載の本体部分の取り外しが可能であり、かつタブレット部分はタブレットPCとして、多様な業務に利用可能なタブレット型マルチターミナルを上市し、また、別のメーカーでは、通常のPOS運用はもとより、催事開催時の会場への増設やレジ混雑時の前捌きPOS、さらに接客用の端末としても利用可能なタブレット型POSターミナル本体と専用クレードルから構成される製品を発売した。

■2020年に向けて、各種制度改正への対応
2020年の東京オリンピック・パラリンピックイヤーに向け、国内の流通小売業においても、様々な取組みが進められる見通しである。国は、クレジットカードのIC化を進めており、クレジットカードを取り扱う全国の店舗では、今後ICチップに対応した読み取り端末の導入が義務化され、POSターミナル及び周辺機器である決済端末のIC対応、リプレースが一気に進むと考える。また、消費税率の10%へのアップと、それに伴う軽減税率の導入も予想され、消費税に関する何らかの対策と、それを円滑に実行するための助成が実施されると見られ、この時期がPOSシステム更新の重要な節目になると考える。

POSターミナル市場の将来展望

今後は2020年に向けて、流通小売業にとって対応すべき様々な各種制度改正が目白押しであり、国内のPOSターミナル市場に関しては、更にシステムのリプレース機運が高まると考える。これまでシステムの更新を躊躇っていたユーザー企業各社も、決済関連や税制の変更、インバウンド需要対策などの要因から、設備投資に踏み切る可能性は高く、2017年度以降は相当な伸びが期待される。
国内のPOSターミナル市場(メーカー出荷ベース)は、台数ベースでは2015年度から2019年度までCAGR(年平均成長率)で4.0%となり、2019年度の同出荷台数は173,601台になると予測する。一方で、ハードウェアの価格については依然下落傾向は避けられず、金額ベースでは伸び悩みが続き、2019年度の出荷金額は520億8,000万円にとどまると予測する。
しかし、2020年以降、そうした投資が一巡した段階で、POS業界としては新たな提案をしていかなければ、将来的な低迷は避けられない。例えば、POSを活用して売り上げを拡大するソリューション等をユーザー企業に提供できなければ、POSターミナルメーカーの活路は見つけにくくなっていくと考える。

関連リンク

■レポートサマリ
小売業のビッグデータ活用に関する調査結果2015
タブレットPOS市場に関する調査結果2014
POSターミナル市場に関する調査結果2014

■アナリストオピニオン
流通業とITのただならぬ関係


調査要綱

調査期間:2016年10月~12月
調査対象:POSターミナルメーカー、POSソフトウェアベンダ、タブレットPOSベンダ等
調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

POSターミナル市場とは:POS(Point Of Sales system)とは、販売時点売上管理システムともいわれ、物品販売の売上実績を単品で管理し集計するシステムをさす。POSシステムは、サーバやPOSターミナル(端末)、POSソフトウェア、その他周辺機器から構成される。本調査におけるPOSターミナル市場は、メーカー出荷ベースでPOSターミナル(端末)の市場規模を算出した。但し、タブレットPOSは対象としていない。

 

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野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
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