レポートサマリー
2016.08.09
ITアウトソーシングサービス市場に関する調査を実施(2016年)
クラウドの普及によりサービスの多様化が進み、顧客の自由な選択が可能に
ITアウトソーシングサービス市場概況と予測
- 2015年度のITアウトソーシングサービス市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比100.2%の3兆8,434億円であった。ITアウトソーシングサービス全体として見た場合は微増の推移であるが、内訳を見ると、オンサイト運用・保守サービスからデータセンター関連サービスへの切り替えやシフトが進んでいる状況である。
【図表:ITアウトソーシングサービス市場規模推移と予測】
- 矢野経済研究所推計
- 注:システム利用企業内にあるシステムの運用保守を代行する「オンサイト運用・保守サービス」と、データセンター内にあるシステムの運用保守を代行する「データセンター関連サービス」を対象とし、サービス提供事業者の売上高ベースで市場規模を算出した。
- 注2.2016年度は見込値、2017年度以降は予測値
- 注3.オンサイト運用・保守サービスは、「オンサイトハードウェア運用サービス」、「オンサイトソフトウェア運用サービス」、「オンサイトハードウェア保守サービス」、「オンサイトソフトウェア保守サービス」の4つのサービスを対象とし、データセンター関連サービスは、「ハウジング」、「ホスティング」、「データセンターハードウェア運用サービス」、「データセンターソフトウェア運用サービス」、「データセンターハードウェア保守サービス」、「データセンターソフトウェア保守サービス」、「IaaS(Infrastructure as a Service)」、「PaaS(Platform as a Service)」、「SaaS(Software as a Service)」の9つのサービスを対象とした。
- クラウドサービスの普及やサービスの多様化、データセンター利用の増加などを背景にして、ITアウトソーシング市場の2014年度から2019年度までの年平均成長率は0.8%で推移し、2019年度の同市場規模(同ベース)は3兆9,985億円になると予測する。
データセンター関連サービスの動向
■クラウドの普及によりサービスの多様化が進む
- クラウドサービスでは、パブリッククラウド(サービス提供事業者のクラウド基盤)の利用が順調に伸びているが、同時にサービスの多様化も進んでおり、複数のクラウドを使い分けるハイブリッドクラウドやプライベートクラウド(特定企業が所有し、その企業やグループ企業だけが利用するクラウド基盤)を含めて、最適なサービスを顧客が自由に選択するようになってきている。そのようなクラウドサービスの使い分けやハイブリッド化などが進んだことで、最適なシステム構築や運用サービスを求めるユーザー企業も増加している。
- また、システム環境の変化や多様な新技術の出現もあり、ユーザー企業が利用するクラウドサービスのマルチベンダー化が進んでいる。これに伴い、クラウド環境の統合管理のニーズも高まっていくが、今後は1社のサービスベンダーにすべてを任せるよりも、複数のクラウド環境を統合マネジメントしていく方向に進むと予測する。
- 一方で、クラウドサービスの利用増加とともに中堅・中小規模のユーザー企業ではSIerを介さずに、自社でパブリッククラウドを使いこなす動きも出始めている。
- データセンター関連サービスの利用が進んでいるのは、ユーザー企業が抱えるデータ量が年々増加しているため、増加したサーバーをデータセンターに預ける企業が引き続き増加していることが背景にある。さらに、クラウドの普及が進み、クラウドサービス提供事業者のデータセンター利用が進んでいることも要因となっている。
- こうしたことから、2015年度のデータセンター関連サービス市場(事業者売上高ベース)は、前年度比103.9%の2兆929億円となった。今後、2014年度から2019年度までの年平均成長率は3.6%で推移し、2019年度の同市場規模は2兆4,035億円になると予測する。
オンサイト運用・保守サービスの動向
- オンサイト運用・保守サービスは、ユーザー企業がデータセンター関連サービスへのシフトを進めているため、利用が減少している。特に、IT機器単価の下落が保守サービス料金を低下させており、ITアウトソーシングサービス提供事業者のドル箱と言われてきたオンサイトハードウェア保守サービス市場の縮小が進んでいる。また、クラウドサービスの普及やデータセンター化の進展により、オンサイトにサーバーを設置しないユーザー企業が増加していることも影響している。
- こうしたことから、2015年度のオンサイト運用・保守サービス市場(事業者売上高ベース)は、前年度比96.2%の1兆7,505億円となった。今後もサービスは縮小傾向となり、2019年度の同市場規模は1兆5,950億円に減少すると予測する。
関連リンク
■レポートサマリ
●ITアウトソーシングサービス市場に関する調査結果 2015
●ITアウトソーシングサービス市場に関する調査結果 2014
●ITアウトソーシングサービス市場に関する調査結果 2013
調査要綱
調査期間:2016年5月~7月
調査対象:コンピューターメーカー、システムインテグレーター(SIer)、データセンター専業者等のITアウトソーシングサービス提供事業者
調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・eメールによる取材、ならびに文献調査を併用
※ITアウトソーシングサービスとは:ITアウトソーシングサービスとは、情報システムのハードウェアやソフトウェアの運用保守業務を代行するサービスのことを指す。本調査では、システム利用企業内にあるシステムの運用保守を代行する「オンサイト運用・保守サービス」と、データセンター内にあるシステムの運用保守を代行する「データセンター関連サービス」を対象とし、サービス提供事業者の売上高ベースで市場規模を算出した。
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石塚 俊(イシヅカ タカシ) 主席研究員
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