タブレットPOSは、サーバ上に保管されたPOSソフトウェアを、タブレットをクライアントとして、SaaS(Software as a Service)方式で利用するシステムである。ベンダ各社により製品機能は若干異なり、またベンダによっては自社製品をレジと呼んだり、POSと呼んだりしているが、共通するのは基本のレジスタ(売上実績を単品で管理し集計する)機能である。タブレットPOSの利点は小型軽量で省スペースなので、リアル店舗の店頭利用だけでなく、セール会場や店先、訪問販売など、通常の設置場所以外での活用が可能であることである。また、タブレット、特にiPadのファッション性を採用したいという、店舗の内装を重視する業種や企業にも好まれている。汎用マシンとしてのタブレットの特性と、クラウドコンピューティングとしての特性を生かし、POS機能に加えて、様々な機能を追加して拡張していけることも、当該サービスの強みである。例えば、顧客の案内中に商品や在庫の情報、サービスメニュー、顧客情報などを確認することで、接客時のデータ説明精度を上げることが可能である。また、プロモーション機能や販売分析、CRMなどのバックヤード機能に活用することもできる。
さらに、タブレットをECサイトのシステムと連携して活用することも可能である。リアル店舗とEC店舗を連動した在庫の一元管理やECサイトとリアル店舗の相互送客、WEB上の顧客情報や購買履歴を利用したリアル店舗での販売計画立案など、導入企業ニーズに沿った使い道が可能であり、今後も多様な用途への機能拡張が可能になると考える。
タブレットPOSの導入店舗数(有料で利用している店舗数)は、2013年度末の段階では8,200店舗であったが、大手ベンダのサービス参入もあって規模を一気に拡大し、2014年度末には18,800店舗に達する見込みである。 一方で、月額利用料が無料のタブレットPOSへの需要も急拡大しており、2013年度末の段階でアカウント数は44,500件であったが、2014年度末には113,500件まで成長すると見込む。 また、導入1店舗当たりの利用料金は概ね月額5,000円~8,000円の間となっており、タブレットPOS市場規模(事業者売上高ベース、初期導入費用除く)は2013年度が約4億円であったが、2014年度には10億円を突破する見込みである。
今後、タブレットPOSにとっては、ECR(電子レジスタ)や下位のPOSターミナル(端末)からの買替え需要や、新規出店需要が主戦場となるが、代替としてのタブレットPOSのニーズは、一定程度は確実にあると考える。その根拠としては、タブレットPOSはレジスタ機能に留まらず、各種情報処理端末としての拡張性を有していること、イニシャル及びランニングコストの低価格性、また、省スペース性やスタイリッシュでかつ店舗でのモバイル(自由に場所を移動できる)性も、従来のPOSターミナルやECRに比べて強みがあると言って良い。既存のPOSターミナルユーザーや、従来レジを利用してこなかった層(小規模店舗経営者など)においても、新たな選択肢となり得るのは間違いない。
更に、タブレットPOSの拡張機能として、スマートフォン決済事業者が提供するクレジットサービスが利用出来ることも、新規出店したばかりで信用力が低い事業者(ユーザー)にとっては大きなメリットとなる。POS機能に加えて、システムを柔軟に拡張することで他社サービスとの連携が可能になるなど、クラウドならではの強みも有しているのが、タブレットPOSの強みである。こうしたことからも、今後も、一定以上のユーザーの支持を集めることは間違いないと予測する。
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■レポートサマリ
●POSターミナル市場に関する調査結果2014
●POSターミナル市場に関する調査結果2012
調査対象:POS端末ベンダ、POSソフトウェアベンダ、タブレットPOSベンダ等
調査期間:2014年7月~9月
調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用
※タブレットPOSとは:POS(Point Of Sales system)は、販売時点売上管理システムともいわれ、物品販売の売上実績を単品で管理し集計するシステムである。また、タブレットPOSとは、サーバ上に保管されたPOSソフトウェアを、タブレットをクライアントとしてSaaS(Software as a Service)方式で利用するPOSあるいはレジサービスをさす。
※タブレットPOS市場とは:本調査におけるタブレットPOS市場規模は、有料導入店舗数と月額利用料金から算出した。初期導入費用は含まない。
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